• 季節を感じる:三月

omotenashi

1年のおもてなし

三月

雛のおしのぎ

 三月三日は雛祭り。女の子のすこやかな成長と幸せを祈るこの行事は、特にはなやいで、愛らしく、娘たち若い世代にもぜひ受け継いでいってもらえたらと思います。その季にふさわしい料理や器づかい、しつらえなど、伝統のよさを現代の洋風化した暮らしの中で伝えるとてもよい機会になるでしょう。

 お雛さまのごちそうといえば、ちらしずしやはまぐりのお吸い物、菜の花やうどのあえ物など。わが家ではいつも錦糸卵をふんわりのせた穴子のちらしずしを作りますが、子どもたちや外国のお客さま、パーティなどに手まりずしも好評です。可愛らしく、一口でいただけるのが魅力です。

 雛(ひな)には小さな、愛らしいなどの意味があり、これまで少しずつ集めてきた小さな器やお膳を出して、雛遊びを楽しむことになりました。女の人はいくつになっても雛祭りは心浮き立つもの。お茶の時間に、お茶とお菓子ではなくて、 “おしのぎ”を用意します。おしのぎとは、空腹をしのぐことから、軽い食事のことを言います。


雛祭りの起源はおよそ千年の昔。平安時代の貴族の家庭で幼い女の子たちが紙や布で作った「ひいな」と呼ばれる小さな人形を用いた遊びに、古来中国の身の汚れを祓うという節句行事が合わさったものと考えられています。


貝合せ  
はまぐりは、二枚の貝がぴったり合うのは一対しかないことから、よき伴侶を願って雛祭りの遊び道具に用いられて来ました。写真は、はまぐりの香合。

All photos:
Aya Brackett ( http://ayabrackett.com/ )

Special thanks:
Miki Hirota, Sylvan Brackett ( http://eatpekopeko.com/ )